東京大学アルスノーヴァ

アルスノーヴァは、東京大学を舞台に上演される新しい実験的なアートスクールです(注1)。ここでは「アート」を単一の分野として扱うのではなく、ラテン語の「アルス」という語源に遡り、つくること・感知すること・考えることのための「術」の総体として捉え直します(注2)

プログラムは、大学の中にすでに散在している多様なアルスを、あらためてつなぎ直すことを目指します。たとえば、工学/物理学のセンサー技術、農学/生物学の植物環境研究、情報学のメディア理論、表象文化論/美学の芸術研究など、異なる領域を横断する新しい学びと制作の回路を立ち上げます。どの回路も、あらかじめ決まった答えではなく共同の実験から始まります。

授業は、異なる専門分野をもつ複数の教員が同じ科目名のもとで共同担当します。これは単なる役割分担ではなく、教員同士が互いに学び合うプロセスそのものを授業として開くための演出です。学生は、教員がすでに知っていることを学ぶだけでなく、教員が知らないことをどう学ぶのかを見ながら学びます。

またアルスノーヴァには、大学の外からも色々な実践者が参加します。アーティスト、音楽家、パフォーマー、エンジニア、編集者、プログラマー、ドラマトゥルクなど、多様な術の担い手が教育と制作に協働者として加わり、授業と並行して運営されるパブリッシング部門を通じて成果を公開していきます(注3)

メンバー五十音順

大岩 雄典

プロフィール

美術家。「インスタレーション」を、人間を拘束し上演している現実の装置=法にたいする再現・分析・介入の技術として捉えて美術作品を制作し、その助けとして批評や理論研究やワークショップも行なう。法律、感染症、漫才、カードゲーム、お化け屋敷、ウェブサイト、雀荘など、同時代性と普遍性の両方の射程を基準に、モチーフや形式を縦横に探究する。主な展覧会に「渦中のP」(個展/十和田市現代美術館)「Encounters in Parallel」(グループ展/ANB Tokyo)など。euskeoiwa.com

金井 学

プロフィール

1983年東京生まれ。ロスジェネ後期、キレる17歳世代の43歳、癸亥B型水瓶座。

「芸術」を創り出すことを望んでいるが、そうすると「芸術」とは結局のところ何なのか、それはどのようにすれば創り出せるのかをまず考え始めてしまう質であり、その手がかりを求めて「ハッキングから今晩のおかずまで」の標語を参考に日夜あちこちを探しまわり、いろいろな事柄を少し考えたり考えなかったり、多少理解したり誤解したり、思い出したり忘れたりしながら、芸術になりそうなものを作ってみたり壊してみたりしている。terrainvague.info

曽根 千智

プロフィール

演出、ドラマトゥルク、リサーチャー。兵庫県出身。劇場や財団で働きながら、フランス、ポーランド、タイなどの国との国際共同制作の現場に参加。DIYの技術を消費社会のサイクルからはみ出すための手段ととらえ、自ら床を貼り家具を作って改装した家で暮らしている。自宅内の黒土で微生物を育てている。制作と創作と生活をあいまいに揺蕩いながら、交わり往来する芸術の周縁を観察したい。最近の主な作品に『洗髪のレシピ ー身体加工から表現を考えるー 』(24)。

中井 悠(ディレクター)

プロフィール

No Collective(nocollective.com)のメンバーとして音楽、ダンス、演劇、お化け屋敷などを世界各地で制作。並行して電子音楽のからくり、パフォーマンス概念の系譜、影響の流出プロセス、振付としての癖、墓の振る舞いなどについて研究。著書に『Reminded by the Instruments: David Tudor’s Music』(Oxford University Press, 2021年)など。プロジェクトに、1974年に構想されたものの未完に留まっていた、孤島を丸ごと楽器化する《Island Eye Island Ear》の半世紀越しの実現(2024年)など。翻訳に『調査的感性術』(水声社、2024年)、『フォレンジック・アーキテクチャー』(水声社、2025年)など。東京大学総合文化研究科(表象文化論コース)准教授、アヴァンギャルドアート部会(departmentofavantgardearts.tokyo)主任、副産物ラボ(selout.site)主宰。

永井 友香

プロフィール

北海道出身。大学で留学支援や研究プロジェクト推進に従事。プロジェクトマネージャーとして学際的コミュニティの形成やイベント運営に携わる。

音楽、映画などのサブカルチャーに傾倒。特に新しい音楽の発掘のために探究心を燃やし、ミュージックサーフィンに勤しんでいる。

芸術というキーワードに導かれ、東大アルスノーヴァに辿り着く。アルスノーヴァでの夢はフェスを開催すること。

西原 尚

プロフィール

音を主要な媒体として、サウンドアートを実践・実験している。音を生み出すために必要な、木、人間、空き缶、電気、などの物体が、この世界でどのように存在し、互いにどう関わり合っているかを聴く。来場者や観客もまた、音をありのままに聴くことがいかに困難かを語りかけてくる。魂と心と脳と耳が常に一体となって働き、決して分離しないためだ。もっと物や人の声を聴くために、遠くへ旅をしたい。美術展や勉強会などの場を借りて、これまでの経験を共有したい。録音技術、音響技術、楽器作り、木工、工作を得意とする。共訳書に『サウンドアート』(アラン・リクト著、2010)と『ミュージック』(H.U.オブリスト著、2015)。また、恩田晃と共にCD「荒野へと」(2020)をリリース。

西村 由紀子

プロフィール

東京都出身。祖父母の影響で日本文化に親しみ、神輿や甘酒を通じた地域のつながりを感じて育つ。5歳から20歳まで日本舞踊を習い、身体芸術を通して、伝統・空間・所作の美を学ぶ。現在は畳のあるマイホームを建築中。

最近では、同じ釜の飯を食うことが最強のコミュニケーションだと実感しており、仲間との時間を大切にしつつ、一人の時間も楽しみ、ユーモアを忘れない暮らしを心がけている。

家族愛に弱く、恐怖と成長の物語に惹かれギャグでそれを成立させてしまう『ヘンダーランドの大冒険』がお気に入り。

萩生田 京子

プロフィール

岐阜県出身。海無し県・空港無し県の土地で育った反動から、遠くの世界への強い憧れを胸に育った。現在は神奈川県在住でやはり海と空港が好き。

得意分野は生花や植物を自由自在に扱うこと。近頃は生花や植物を媒介に、癒しやときめき、学びが柔らかく溶け合う瞬間を探りながら、植物と異物を組み合わせた実験的なデザインを趣味として制作している。悩んだ時は逆立ち。

朴 建雄

プロフィール

目の前の人の発言をよく咀嚼し、そのからだのあり方に反応することで、相手の心身に起こりつつある何事かをじいや的に支えて活性化することを好む。ドラマトゥルク・企画・制作・批評などの立場で国内の領域横断的な演劇やダンスの創作現場で主に活動してきたが、「文化芸術」界隈の内輪ぶりに嫌気がさして国外(ポーランド、メキシコ)に逃亡。しかしそこでも内輪しかないことを痛感して帰国し、現在は食や街歩きなどの身体感覚を共有する行いを活用しながら、様々な活動や分野の内輪や界隈を超えた集まりを試行中。

針貝 真理子(副ディレクター)

プロフィール

研究者。福岡市生まれ。「方言」から外国語まで、さまざまな言語が入り乱れる家で育つ。専門は演劇学、ドイツ文学・思想。声と言葉を同一視しない、ポストドラマ的な演劇における声の演出について研究してきた。ひとびとが集まる場としての演劇に関心があり、近年は演劇学と政治学を交差させる試みにも力を入れている。主な著書:Ortlose Stimmen(transcript、2018)、『モノと媒体の人文学—現代ドイツの文化学』(共著、岩波書店、2022年)、『演劇と民主主義』(共編著、三元社、2025年)。国内外で、ドラマトゥルクとして舞台芸術の実践にも関わる。researchmap.jp/mari.harigai/

伴 朱音

プロフィール

長野県出身。俳優・劇場勤務を経て、フリーのプロジェクトマネージャー/コーディネーターとして活動。舞台芸術を介して社会や事象、構造を見つめ、ひっくりかえし、こね、寝かし、焼きあげる、を様々な人と形にしている。可能な限りどこまでも並走中。公衆浴場とドライブが好き。

最近の主な参加作品に日野浩志郎作曲『Chronograffiti』、アートプロジェクトひとひと、松原俊太郎作、山本浩貴演出『インポッシブル・ギャグ』。

山本 さくら

プロフィール

フリーランスアートコーディネーター・広報

1990年生まれ。大学では教員を志し教育学部に属していたが、2011年に参加した領域横断型のダンス公演の制作経験を通じて、パフォーミングアーツを中心とした仕事をはじめる。領域横断したアートプロジェクトのコーディネートや、ラーニングプログラムのディレクションなど行う。2026年度は札幌と東京の二拠点。

飛び込むことが得意。

パブリッシング部門

Hand Saw Press

プロフィール

(プロフィール本文)

山本 浩貴(いぬのせなか座)

プロフィール

1992年生まれ。制作集団・出版版元・デザイン事務所「いぬのせなか座」主宰。小説や詩歌の執筆、芸術全般の批評、書籍や印刷物のデザイン・編集・出版、上演作品の制作などを通じて、現代における表現と生のあいだの関係可能性を検討・提示している。主な小説に「無断と土」(2021)、「親さと空」(2025-)。批評に『新たな距離』(2024)、『フィクションと日記帳』(2025)。デザインに『クイック・ジャパン』(159-167号、2022-23)、𠮷田恭大『光と私語』(2019)。企画・編集に『早稲田文学 特集=ホラーのリアリティ』(2021)。演劇作品の演出に『インポッシブル・ギャグ』(2025)。inunosenakaza.com

科目(プログラム)

科目間の相互関係の全体図

オリエンテーション(定位)科目類

芸術/技術、文理、自己/他者といった既存の区分を感性の多様性から問い直し、共創に向けて思考と身体の習慣を「学び落とす」必修の準備科目です。

科目一覧
感性術 「Aesthetics」を「感性術」として捉え直し、人間を含む諸存在の感知と意味形成を再構想しながら、アルスとしてのアートへの視座と多角的な知覚を体得します。
共創術 ドラマトゥルクのファシリテーションのもと、ジェンダーや障害、文化差などの問題を通じて権力構造を学び、異なる感知をもつ他者との倫理的な共創を実践します。

カルティヴェーション(耕作)科目類

身体・素材・環境との具体的な関係を通じて術を実践的に体得するアルス科目群と、それらを批評的に捉え直して社会や制度を媒介する術へと再構成するメタ・アルス科目群を、基礎から応用へ段階的に学びます。

科目一覧
アルス科目群
感知器(センサ)術 植物やスマホに至るまで外界を感知するあらゆる存在物を「センサ」として捉え、その働きを学び、新たな感知器を構想・制作します。[拡張された道具制作1・インプット編]
楽器(インストゥルメント)術 あらゆる上演的道具や環境を「インストゥルメント」として捉え、制作と操作を通じてスケール横断的な想像力を養います。[拡張された道具制作2・アウトプット編]
仮想現実(VR)術 演劇理論に起源をもつ「ヴァーチャル」の概念から出発し、VRや映像インスタレーションを含む広義の仮想現実を構想・制作します。[拡張された空間制作]
未来予測(プレディクション)術 占術からAIまでを横断し、「予測」と「個別性」の問題を再考しながら、新たな未来感知としての予測術を構想・制作します。[拡張された時間制作]
界面(インターフェース)術 知覚不能なものを可視化する界面の働きを分析し、多様なメディアの比較を通じて新たなインターフェースを制作します。[拡張された平面制作]
模型(モデル)術 世界を圧縮し操作可能にするモデル行為を横断的に学び、その翻訳と再構成を通じて新たな模型とその用途を構想します。[拡張された立体制作]
原振付術 身体や思考に刻まれた「クセ」を既に踊られている振付として捉え、観察と引き算を通じて記録と再生の術として再構築します。[拡張された身体制作1:ダンス編]
原演技術 近代に形づくられた演技術を手がかりに、台詞を超えた身体や日常の「演じ方」、そして技術との接点から新しい表現を探ります。[拡張された身体制作2:シアター編]
メタ・アルス科目群
ドラマトゥルク術 作り手と受け手、過去と未来を媒介する見えない接続点を設計・運用するドラマトゥルクの術を学びます。[制作と受け手の媒介術1:作り手編]
観劇(テオリア)術 理論(セオリー)と演劇(シアター)がともに「観ること」に由来する点に立ち返り、理論を「どこから観るか」という経験の問題として捉え直しながら、批評・観劇・所有の関係を横断的に検討します。[制作と受け手の媒介術2:受け手編]
経済(オイコノミア)術 芸術と経済の逆説的関係を歴史的に検討し、流通や協働の実践を通じて新たな関係モデルを構想します。[制作と社会の媒介術1:実務編]
調査(リサーチ)術 あらかじめ枠づけられた「アート」や「研究」を出発点にせず、調査という行為が術や領域を事後的に生み出していく過程を実践的に探り、制作と研究の関係そのものを再設計します。[制作と社会の媒介術2:研究編]

プレゼンテーション(提示=上演)科目類

制作物を社会にどのように公開し作用させるかを、広報・出版・展覧会・発表などの実践を通じて「上演=提示」のアルスとして学び、実演します。

科目一覧
広報(PR)術 「プロパガンダ」を「広報」と言い換えたエドワード・バーネイズ以降の系譜を批判的に捉え、告知・広告を振付的作用として再定義し実践します。
公開(パブリッシング)術 制作物を公に開く行為としてのパブリッシングを再考し、多様な流通経路を横断する新たな出版形態を実践します(パブリッシング部門と連動)。
プログラム制作術(アルスフォーリ) 複数の術を横断的に持ち寄り、相互干渉から生まれる実践を国内外での発表へと展開する合同フォーラムです。

アドミッション(応募)について

受講対象者について

《アルスノーヴァ》では、あらゆる人がなんらかの形のアルスにすでに携わっているという観点から、学生や職業人、アーティストといった既存の区分を前提としません。

企業や組織に所属する方、すでに創作や研究、実践的な活動を行っている方、あるいは複数の立場を行き来している方を含め、「社会人」や「学生」などの名称(社会的カテゴリー)のもとに固定されがちな役割や時間感覚そのものを問い直し、再編可能な実践の条件として捉え直していくことが本プログラムの出発点にあります。したがって、肩書や年齢ではなく、自身が置かれている環境や立場を相対化し、新たな術を引き受ける余地として再構成しようとする意志と好奇心、そして柔軟性を重視します。

参加料について

入学試験受験料 一律 3万円

受講料 一律 無料

第1期 入試時期(予定)

募集要綱の公開(ウェブ):2026年5月

募集要項はこちら(PDF)

書類試験(デジタル提出):2026年8月

提出フォームはこちら

面接試験(選抜者のみ):2026年9月(上旬?)

結果通知:2026年9月(中旬?)

アドミッションポリシー(入試選抜基準)

《アルスノーヴァ》では、完成された専門性や実績の有無を選抜基準とはしません。

重視するのは、与えられた環境や制度をそのまま受け取るのではなく、それらを「楽器=装置」として読み替え、使い方そのものを構想し直そうとする姿勢です。また、《アルスノーヴァ》というプログラム自体を、あらかじめ完成した教育体系としてではなく、実践と応答の積み重ねによって更新され続ける制作物として捉え、ともに作り変えていこうとする意志を重視します。自ら問いを立て、その問いが要請する条件や形式を設計し、さらにそれを自分自身とプログラムの双方に引き受けて実行できるかどうか——この循環的な思考と実践の力を、選抜の中心に据えます。

選抜課題

  1. 《アルスノーヴァ》のカリキュラム(〜月ごろにウェブ掲載予定)を読む アルスノーヴァ カリキュラム(選抜試験用・PDF)
  2. 0を踏まえて、これまでやってきたこと・これからやりたいことに照らし合わせて、このプログラムをどう使うのかを書く
  3. 1を踏まえて、そのような学校が課すべき入試問題を考える
  4. 2を踏まえて、その問題を解く

プレイベント

「〜〜〜術」イベント

2026年3月28日

東京大学駒場キャンパス X号館

スピーカー 東大太郎(東京大学アルスノーヴァ) 東大花子(アーティスト)

参加料 無料

内容

「〜〜〜術」イベント

2026年7月28日

東京大学駒場キャンパス X号館

スピーカー 東大太郎(東京大学アルスノーヴァ) 東大花子(アーティスト)

参加料 無料

内容

情報フォーム

東京大学アルスノーヴァにご関心のある方に向けて、今後、関連情報の配信を予定しています。以下のURLよりご登録いただけます。

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FAQ

Q. 運営はどこが行なっていますか?
A.(回答 01)
Q. 学校説明会はありますか?
A.(回答 02)

その他

「東京大学アルスノーヴァ」は東京大学芸術創造連携研究機構(ACUT)の共同研究プロジェクトです。運営は「東京大学アルスノーヴァ」メンバーが主体となって行なっています。

「東京大学アルスノーヴァ」は、国立大学法人東京大学が独立行政法人日本芸術文化振興会の文化芸術活動基盤強化基金(クリエイター等支援事業(育成プログラム構築・実践))による助成を受けて実施するプロジェクトです。

海外提携・企業連携

東京大学アルスノーヴァは、国内外の機関、企業との積極的な協働を行なっていきます。